結果報告【エコビレッジ八ヶ岳 国際ミーティング】 of 特定非営利活動法人えがおつなげて

アンサンブル『Regalo』 ミニコンサート

2_1レガロ演奏.jpg

まずはアンサンブルグループ『Regalo』の皆さんが、ミニコンサートで参加者を出迎えてくれました。「エーデル・ワイス」、「ホール・ニューワールド」から、「ふるさと」まで、日本と世界をつなぐ国際ミーティングらしく、素晴らしい歌声で、会場の雰囲気を盛り上げてくれました。


「エコビレッジ八ヶ岳 国際ミーティング」開幕

まずは、主催者あいさつとして、NPO法人えがおつなげての曽根原から歓迎の言葉が述べられました。環境が重視されていく現代で、ますます重要な位置を占めるであろうエコビレッジについて、NPO法人えがおつなげてが提案するエコビレッジとはどういうものかを提示したいという言葉が述べられました。

2_2シキタ氏あいさつ.jpg続いて、NPO法人ビーグッドカフェ代表理事のシキタ純さんから、ゲストあいさつをいただきました。NPO法人ビーグッドカフェは、この「エコビレッジ八ヶ岳 国際ミーティング」開催のきっかけにもなった、「エコビレッジ国際会議Tokyo」を2006年から主催されています。「エコビレッジ国際会議Tokyo」は、重苦しいニュースが多い世の中で、幸せに、豊かに生きるための暮らしとしてエコビレッジを紹介し、エコビレッジを通して世界の人々とつながっていくためにはじめたとのこと。今回、はじめて開催される「エコビレッジ八ヶ岳 国際ミーティング」ともつながっていくことで、さらにつながりの環を広げていきたいとのお言葉をいただきました。

■「八ヶ岳エコロジア宣言!エコビレッジ八ヶ岳構想について」

曽根原から、「八ヶ岳エコロジア宣言!」と題して、エコビレッジ八ヶ岳が何を目指しているかをお話させていただきました。
2_3曽根原あいさつ.jpgえがおつなげては、農村の再生を、都市との連携によりすすめることで、農村と都市の両方を元気にすることを目的に活動をしてきました。この活動を、八ヶ岳エリアにもっと広げようというのが、「エコビレッジ八ヶ岳 国際ミーティング」のそもそものきっかけです。
農村では、過疎高齢化が進むなかで、貴重な資源が放棄されつつあります。一方で、都市にはスローライフや、安心・安全な食の追求といった、新しいライフスタイルを求めている人が大勢います。東京という大都会のお隣にある山梨県は、林野率が全国でも4位、また耕作放棄地率が全国第2位という不名誉な称号もあります。また北杜市では日照時間が日本一と、エコビレッジとなるのにまさにうってつけの地域です。

曽根原は、エコビレッジを①開発型、②教育型、③地域密着型、そして④そのバリエーション型という、4つのタイプに分けることができると考えます。エコビレッジ八ヶ岳が目指すのは、③の地域密着型で、地域の資源を活かしながら、また都市からの力も借りてつくりあげていくのがエコビレッジ八ヶ岳です。資源のバリエーションが豊かな八ヶ岳山麓の特色を活かし、八ヶ岳山麓を、食と農、森林、生物多様性、エネルギー、住宅、観光、アート、教育という8つのゾーンに分け、様々な方に関わってもらいながら、エコビレッジ八ヶ岳を創造していきたいとの宣言がありました。

パネリストの自己紹介

続いて、3名のパネリストにご登壇いただき、それぞれ自己紹介と取り組み紹介をお願いしました。

◇ 糸長浩司氏

日本大学生物資源科学部教授、
NPO法人パーマカルチャーセンター・ジャパン代表理事

まずは、日本大学生物資源科学部教授で、NPO法人パーマカルチャーセンター・ジャパン代表理事の糸長浩司さんから、世界と日本のエコビレッジの事例についてお話をいただきました。

糸長さんは、長年、日本と世界のエコビレッジの研究を続けてこられた、エコビレッジ研究の第一人者であると同時に、日本大学生物資源科学部のキャンパスのなかに教育機能を兼ねたエコビレッジをつくるなど、実践にも力をいれています。
2_4糸長氏.jpgまずは、「エコビレッジとは?」というところからお話をいただきました。エコビレッジ、パーマカルチャーが出てきた背景には、環境危機の時代、ピークオイルという考えがあるとのこと。人間の暮らしには、農業、林業、また何もない自然状態のところ、全部が必要で、5分間で全て歩いて行ける暮らしが豊かではないかという考えにたち、エコビレッジは、この5分間で出来る暮らしを目指しているとのことです。
エコビレッジでは、3つのエコロジー(自然、社会経済、精神)の持続性をはかる、それを自分達でやる、一人ではなくみんなと共にやる、自分達のエリアの中に暮らしの充足性を確保する、といったことが求められています。「コンパクトに、持続的に住む」ということが、エコビレッジで大事な考え方です。


世界のエコビレッジの事例としては、エネルギーの自給を行うデンマークのエコビレッジ、集団で住んでまわりに自然や共同スペースを創っているアメリカのイサカ、教育的な機能を活かすエコビレッジとして、イギリスのCAT等をあげていただきました。
日本の場合では、農村には13.5万人の集落コミュニティがあり、一方都市には、団地問題もあり、これをいかに持続的に、エコロジカルにしていくかが課題とのことです。新たな取り組みもあれば、江戸時代の新田集落のように、もともと日本にあるものもありますが、いずれにしても、今後は、「シェア」という言葉がキーワードになるとのお話でした。

◇ タムラ・トミアキ氏

アルコサンティ・プロジェクト&ソレリアーカイブディレクター

続いて、アメリカはアリゾナ州でアルコサンティ・プロジェクト&ソレリアーカイブディレクターとして活躍されるタムラ・トミアキさんから、アルコサンティについてご紹介をいただきました。

アルコサンティは、スコットランドのフィンドホーンや、インドのオーロビル等と並び、40年前にはじまったプロジェクトのひとつです。イタリアの建築家パオロ・ソレリが建築をはじめたのが1970年で、タムラ氏は35年前から携わっているそうです。
2_5タムラ氏発表.jpgこのアルコサンティ・プロジェクトは、現在までに全体計画の3%程度しか完成していないという、息の長いプロジェクトです。建物は、ワークショップ形式により、素人の手で作りあげられてきたもので、時間はかかっても、力を合わせればいろいろなことが出来るという例になるとのこと。このワークショップは常時行われていて、かつビジターにも開放しているとのことで、アリゾナに来た際には、ぜひアルコサンティを体感して欲しいとのことです。


アルコサンティには、住民が60人程度、それに学生やボランティアが加わり、常に80~90人程度が住んでいるそうです。収入源は、パオロ・ソレリがデザインした、ソレリ・ベルなどの陶器やクラフトなどの販売が最も大きく、お土産の売上で建設費用の60%がまかなわれているとのこと。また、アルコサンティでは、ボランティアでも授業料を払うことになっていて、ビジターがおとしていくお金も建設費になっているそうです。それでも、学生等がボランティアで手伝ってくれる部分が一番大きいとのお話でした。

ペネロペ・レイエス氏

グローバル エコビレッジ ネットワー オセアニア&アジア代表

最後に、フィリピンからお越しいただいた、グローバル エコビレッジ ネットワー オセアニア&アジア(GENOA) 代表のペネロペ・レイエスさんから、アジアのエコビレッジについてお話をいただきました。

2_6ペネロペ氏.jpg例えば、タイのワンサニット・アシュラムは、仏教のトレーニングセンターであると同時に、EDE(エコビレッジ・デザイン・エデュケーション)のトレーニングも実施しているとのこと。バングラデシュでは、農村での疾病率が高い(特にHIV)ことから、エコビレッジのトレーニングとあわせて、HIVの認知と予防や、災害管理など、総合的な開発事業として行われています。スリランカの事例では、津波被害者のためにエコビレッジが作られたというケースもあるそうです。
韓国では、NPO主導のもと、参加型のアプローチによって、パーマカルチャーを取り入れたコミュニティが作られているとのこと。エコビレッジ八ヶ岳に似て、都市に一度出た人の、農村への回帰志向にあわせたエコビレッジプログラムが出来ているそうです。また、中国のBenli ecovillageでは、51GiveというNPOの協力のもと、環境保全技術の導入にマイクロファイナンスが取り入れられているそうです。
そしてフィリピンでは、ハッピーアースNPOによって、持続可能なまちづくりのために、フェアトレードによるコーヒービジネスを実践しているとのことでした。
アジアでは、多くのエコビレッジがNPO主導によって進められており、地域を団結させる手法として、参加型手法とパーマカルチャートレーニングが多く用いられているそうです。また、新しい動きとして、トランジション・タウンとエコビレッジが融合してきているとのこと。今後も、よりつながって、シェアしていくことが重要とのお話をいただきました。


参加者からの質問

参加者からは、「エコビレッジとは何か?」という質問があがりました。既存のコミュニティを利用してエコビレッジ化していくのか、何もないところに新しくコミュニティを作るのか、それとも両方のスタイルがあるのかという質問があがりました。

2_7会場.jpgこの質問に対し、ペネロペさんからは、エコビレッジを作るには、ゼロから始めるやり方の、既存のコミュニティを改善してエコビレッジにしていくというやり方の2つの方法があるとのコメントのうえで、大事なことは、社会的なネットワークをつくり参加型の手法で進めていくこと、人々が自分の手で作り上げていくことだという回答がありました。世界観、エコロジー、社会性と経済性について、価値観を共有することが、強いコミュニティを作るのに重要なことだという回答がありました。



パネル討論

ここからは、パネル討論として、3つのテーマをもとに、3名のパネリストからコメントをいただきました。

◇「八ヶ岳エコロジア宣言、私はこう見る」

まずは、「八ヶ岳エコロジア宣言、私はこう見る」と題して、地域密着型、地域資源を活用する「エコビレッジ八ヶ岳」のご意見、感想をいただきました。

ペネロペさんからは、コミュニティの人びととコミュニケーションを持つことが必要とのお話がありました。スタディツアーで見た地域は、家が点在している印象があったので、強いコミュニティを作るためには、皆が集り、志を共有しあえる場を創ってはどうかとの提案です。例えば、廃屋をパーマカルチャーの手法で甦らせ、活用することがあげられました。まずは、エコビレッジ八ヶ岳という大きな構想があって、そのなかで、ひとつひとつの家がパーマカルチャーの手法で整えられていくといいのではとのご意見でした。

タムラさんからは、「Think Grobal Act Local」という言葉があっても、サステナビリティをローカルにだけ当てはめるのは無理があるとのご意見があがりました。グローバルに物事を見ながら、自分の出来る範囲でやっていくことも堅実だけれど、それだけで満足してしまうと、サステナビリティは達成できないとのことで、八ヶ岳に関しても同じことがいえるのではないかとのご意見をいただきました。

糸長さんからは、八ヶ岳エコロジア宣言について、最初のステップとしてはいいけれど、エコビレッジを考えていく際には、スモールに、よりコンパクトに生活することをベースに考えなければいけないとのご指摘があがりました。例えば、ゾーンに分けること自体も近代化がもたらした発想であり、5分間で全て出来る暮らしとは異なるというご指摘です。スケールを落とした形でプランニングを進めるとともに、地域に入ってエコビレッジ活動を進めていくことが大事とのご意見をいただきました。

また、会場からは、環境負荷を相殺するような、大きなインダストリーを作る思想があっても良いのではないかという意見もあり、例えば北杜市のどこかでプロトタイプを創ってもいいのではとのご意見があがりました。

◇ 私が描く「エコビレッジ八ヶ岳」
次に、私が描く「エコビレッジ八ヶ岳」というテーマでご意見をいただきました。

糸長さんからは、エコビレッジが個々で自立することも大事だけれど、エネルギーと情報のようにつなげた方がいいものもある、とのご意見があがりました。エネルギーのエリア内での自給性と、スマートグリッドによってやりとりがちゃんと出来るネットワークを創ること、それと同時に、暮らしについては、拠点をしっかりと作ることがあげられました。清里についても、エコタウン清里としての役割を担わせ、魅力を持ったセンターとすることが提案されました。

2_8糸長氏コメント.jpg一方、タムラさんからは、エネルギーと情報はオープンということでいいが、情報、エネルギーだけでは解決できない部分については、物理的なネットワークが必要になるとのご意見もあがりました。エコビレッジが広がり増えていくなかで、物理的な意味でネットワークしていくというチャレンジも出てくるのではというご意見です。アルコサンティのように、アリゾナの砂漠のなかで出来るのであれば、他のコミュニティでも出来ると考えているとのことで、自分達のコミュニティで出来ることは、他のコミュニティでも出来るというつながりが出来てくるというお話でした。

また、ペネロペさんからは、エコビレッジで大事なことは、価値観をいかに共有していくかということだとのお話をいただきました。都市に住んでいる人に、いかに八ヶ岳に入ってきてもらうかも重要で、そのなかで一番大事なのは、「協働する」という価値観とのこと。都市が全てではなく、ともに幸せになっていくという価値観や、シンプルな暮らしに幸せを見出す価値観、エネルギーを公正に分けあい、お金とモノを公平に交換する、楽観的な思考をもつこと、このような価値観を共有することが、エコビレッジには大事なことだというお話でした。

◇「世界でつながるエコビレッジ」

最後に「世界でつながるエコビレッジ」というテーマでお話しいただきました。世界で新しい暮らしの形がはじまるなか、これをどうエンパワーメントしていくかが重要なテーマになってきます。今回はせっかく、世界の各地から集まっていただいたので、どのような繋がり方で動きを拡大していけばいいか、ご意見を伺いました。

タムラさんからは、世界に点在する素晴らしい技術や体験に目を向けることの重要性があげられました。それぞれの国やそれぞれのコミュニティが、環境問題、エネルギー問題をいかにコントロールするかが、ひとつのチャレンジだと思うので、ひとつひとつのエコビレッジがつながっていくべきだとお話いただきました。

ペネロペさんからは、人々がつながるためのネットワークを組織であるGEN(Global Ecological Network)についてお話をいただきました。GENは、世界中のエコビレッジから情報が集まり、お互いにシェアすることができるので、エコビレッジ八ヶ岳からも情報を発信して欲しいとのお話をいただきました。皆さんは地域で活動をするのと同時に、世界につながっているといえる、私たちは“グローカル”に活動していて、まさにこれが私たちの活動のダイナミズムだとのお言葉をいただきました。

糸長さんからは、日本型のエコビレッジをどう作っていくかということで、既存の集落を、持続性という視点でいかに再生、あるいは構築していくのかが重要とのご指摘をいただきました。日本の場合は、ヨコにつなげていくという視点が弱いとのことで、エコビレッジ八ヶ岳でも、まずは八ヶ岳エリアのなかでの民間セクター、行政セクター等の垣根を取り払い、つながっていくというチャレンジをしてはとのご意見をいただきました。八ヶ岳の中でのつながりを深め、そのなかで魅力を深め、世界に発信していってはどうかとのご意見です。次の次ぐらいには、エコビレッジ八ヶ岳インターナショナル・カンファレンスが出来、つながり、発信していければいいのではないかとのご提案がありました。

■ 閉会のあいさつ

最後に、閉会あいさつとして曽根原から、3年後には、活動報告も兼ねた、カンファレンスとフェスティバルを行いたいとの提案があがりました。
エコビレッジ八ヶ岳は、地域密着型であると同時に、都市との連携についても重要なテーマとしているので、今回、参加された皆さん方にもご参加いただき、進めていきたいと考えています。

遠くからお越しいただいた、ペネロペさん、タムラさん、また前日までの3日間、「エコビレッジ国際会議Tokyo」のコーディネートを行っていた糸長先生、主催をされていたシキタさんには、遠くからお越しいただき、大変ありがとうございました。
また、平日の夜にも関わらず、多くの方にご参加いただきまして、本当にありがとうございました。最後に、皆さんに盛大な拍手をお送りして、閉会となりました。次回、またこの八ヶ岳山麓で皆さんにお会いできることを楽しみにしています!